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 ――11:00、高原なんでも事務所
「あの子を雇うって……本気か?」
 昨日此処に来た彼を雇うという話をしたらケイが明らかに不満そうな顔で反論した。
 まぁ割と危険な仕事だから当然の反応なんだが……。
「っていうか大学の帰りに寄るように話したから必要な書類とか用意しといて」
「それは良いけど素人に何やらせる気だよ……」
「事務所内の仕事はアサコいるから問題無いだろ?」
「まさか戦わせるの?」
「調査なんて時間の無いヤツにやらせる仕事じゃねぇーだろ? アイツなら大丈夫だ。潜在能力なら俺より高いし……」
 霊感の全く無いケイはそこで反論を止め、自分のデスクに戻った。
 表情からすると納得しているようには見えなかったが、今更どう言われようが彼を雇うのは既に決定している。
(さて、どうやってケイのご機嫌をとるか……)
 そんな事を考えながら煙草に火を点けると、廊下の方から何やら話し声が聞こえてきた。
(あの声はトオルか……?)
 そう思っているうちに扉が開く。
「お疲れ様でぇ~す!」
 そう言って入ってくるトオルの後ろで昨日の少年……田中コウとアサコもいた。
「ケイ、彼に書類書かせて。アサコはケイの補佐でもしといて。トオルは報告しろ」
 俺は大まかに指示を出して目の前に来たトオルに向き直る。
「シンちゃん、また痩せた?」
「気のせいだろ……で、どうだった? 何か見つかったか?」
 トオルにはS県の西にある山奥の村の現地調査に行ってもらっていた。
 これは依頼された内容では無く……いや、強いて言うなら俺の依頼だ。
「確かに神社らしきモンはあったな……多分敷地内に地下に行ける道もあるだろうけど、見た感じ何処も塞がれてたな」
 これで3回目の現地調査だったがいまいち手応えの無い報告に思わず溜め息が出た。
「あれ? 彼女の発言通りだったのにがっかりした?」
 そう言ってトオルはニヤニヤしながら俺の顔を覗き込む。
「近い。俺はリンじゃねぇーんだ」
 そう言って手でトオルを遠ざけたが、トオルは悪びれた様子は無く、ニヤニヤしたまま煙草に火を点けた。
「で、所長はどうするの?」
「またリンに話して情報を聞き出すしかねぇーな。地下に行けた所で何も無かったら意味がねぇーからな」
「じゃあ、何かあったらまた報告するわ。……で、話変わるけどあの子何だ?」
 トオルはそう言って後ろの席で書類を書くコウの方を見た。
「雇うんだよ。潜在能力の高い子だから教育すれば実戦投入出来そうだしな……」
「まぁ、俺は所長の意見に反対しないけど……何かシンちゃんの好みドンピシャっぽい」
 そう言って向き直ったトオルはやはりニヤニヤ笑っていた。
「いや、私情は一切入れてないからな」
「了解。そう言う事にしておくよ」
 トオルは思っていないような口振りで言うと、コウの方へ向かって行った。
(しばらく賑やかになるな……)
 俺はトオルの背中を見送って再び煙草に火を点けた。