第二話 1 2 3 4 5 6 7


 マンションの駐車場に車を止め、高原さんと並んで入り口の前に立った。
 時間にして午後5時頃、空が暗くなってきており、オカルトネタを実行するには嫌な雰囲気だ。
「まだ、住民が動いてる時間にやったらマズくないっすか?」
 高原さんに恐る恐る質問すると、煙草の火を消して携帯灰皿に吸殻を入れながら答えた。
「まぁ、エレベーター乗った時点で乗り合わせなければ大丈夫だろ?」
 そう言って、マンション内に入っていくので、慌てて追いかける。
 エレベーター前まで行き、上に行くボタンを押されるのを確認した後、辺りを眺める。
 陽の光が届かない場所のせいか、蛍光灯で照らされていても薄気味悪さを感じる。
 そう思ったのも束の間、エレベーターが到着する。
「あぁ……一人じゃないとダメなんだっけ?」
 思い出したようにそう言われ、俺は慌てて頷いた。
「じゃあ、俺が先言ってるわ。後から来て」
 そう言って、一人でエレベーターに乗り、扉を閉めてしまった。
 俺はエレベーターが2階に上がったのを確認してから再び上へ行くボタンを押し、携帯で方法の順序を確認した。


 そんな事をしている内に、エレベーターが再び俺の目の前に止まり、扉が開いた。
 幸い乗り合わせる人はいなかったが、内心少しがっかりした。
 中に入り扉を閉め、先に5つの行き先ボタンを押してしまう。
 途中で誰かが乗りあわせてしまったら最初からやり直しになってしまうが、
高原さんは戻って来なかったから今は住民の動きが活発な時間帯では無いのだろう。
 押したボタン通り、到着しては扉は開くが誰も乗ってこない。
 その内5個目の階数に到着し、降りずにそのまま手順通りに次の階を押す。
 この階に到着した時点で女の人が乗ってくるはずだ。
 下に行くエレベーター内でさっき高原さんに貰った銃と携帯を握りしめ、
動けずにいるとエレベーターが音を立てて扉を開く。
 今の季節に合わない真っ赤なコートを着た黒髪の女性が長い髪を翻して乗ってきた。
 そして、俺の斜め後ろに立つと、扉が閉まる。
 俺が慌てて次の階を押すと、確かにエレベーターは下に行かず、上に上がっていった。
「(到着すれば高原さんがいるから大丈夫)」
 そう自分に言い聞かせ、動かずにいると、後ろの女の人がいきなり呟いた。
「今日は人が多いわねぇ」
 その言葉に心臓が跳ね上がり、背中に嫌な汗が伝うが、そのままエレベーターは到着し、扉が開いた。