そんな平和な日常が崩れたのは5月連休明けの事だった。
「中野が行方不明?」
今井の発言が信じられず、食堂二階の喫煙所で思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「コウちゃん、声デカイよ!」
俺に負けず劣らず今井が大きな声を出した。
今井曰く、どうやら俺や今井と同じ学科の同級生である中野が連休前にこう言っていたらしい。
『ネットで噂の異界に行く方法試してみるわ!』
その当時、流石の今井も話半分に聞いていたようだが、連休最終日の夜に中野と仲が良い林から電話があり、
中野が3日間音信不通で家にも帰っていないと言っていたらしい。
「なぁ、何かヤバくね? 中野って意外と優等生だし家出とかするように見えねぇじゃん?」
確かに今井が言うように中野は派手に遊び回るような印象が無い。
どちらかと言えばオタク気質だったような気さえする。
あの、目線合わせない感じとか……。
「林は? その後会ったの?」
「いや、林は確か3限出てるはずだから教室行けば会えるかも……」
この時点で深入りしなければいいものを、俺は興味半分で今井と二人で林に会いに行った。